おじさんたちの話は続いています。

 

「そんであの牧場のおやじ、

やめるってウワサなんだよ。」

「他の人がやるんですか?」

「いや、なんでもおっきな会社が来てさ、

 となりの牛の牧場も近隣の山も

全部買ってホテルだのなんだの

 ぶっ建てるらしいんだよね。」

「あの牧場がなくなっちゃうんですか?」

「ほれ牧場ってのはうちもそうだけど、

 こっちが苦しいんだよなぁ。」

 

牧場のおじさんは少し下品に、

親指と人差し指をまあるく合わせて輪っかを作ってみせ、

腕組みをすると黙ってしまいました。

 

医者のおじさんも頬杖をつくと、

大きくため息をついて天井のほうを眺めています。

 

 

その足もとで猫たちが騒ぎだしました。

 

「おい、聞いたか。」

「うん、お兄ちゃん。」

 

トラとソラが言いました。

でもリボンちゃんは声が出ないので、

だまってうなずきました。

 

「こうしちゃいられないな。」

「お兄ちゃん、牧場に行かなきゃ。」

 

2匹が大きな声で話している様子は、

おじさんたちにも聞こえました。

 

「あれ、猫にもわかったかね。」

「そうかもしれませんね。」

 

すると3匹がいっせいに外に駆け出しました。

おじさんたちはビックリして目を丸くしています。

 

 

3匹がアオのいる小屋に着くと、

アオはもう目を覚ましていました。

ソラが言います。

 

「アオ大変だよ!牧場がなくなっちゃうよ!」

「アオすぐ帰るぞ!」

 

トラが続けて言いました。

いつも突然の話ばかりで、

アオもほとほと閉口しましたが、

ふるさとがなくなってしまうことは一大事です。

 

「さぁ、みんな乗って!」

 

アオは少ししゃがんで3匹を背中に乗せました。

 

「よし!出発だ!」

 

トラが大まじめな顔で言いました。

 

「おーい!」

 

玄関からおじさんたちが呼ぶ声がしましたが、

アオたちはかまわずズンズン歩いていきました。





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