むこうから祭囃子が聞こえてきます。
「アオ行ってみよう!」
ソラは楽しげなリズムにウキウキし、
急いでアオの背中に飛び乗りました。
アオはそんなソラの様子にニッコリすると、
お囃子の聞こえる神社に向かって歩き出しました。
たくさんの屋台が並んで、
その灯りが参道を明るく照らしています。
「うわぁカワイイね!」
父親に手を引かれた女の子が指差すほうを見ると、
屋台の店先にしつらえた台の上に
1匹のトラ猫が座っていました。
人々がその頭を撫でると、
猫は気持ち良さそうに目をつむったり、
時には『にゃー』と鳴いています。
「お兄ちゃん?トラ兄ちゃん!!」
アオの背中でソラが叫びました。
その声で猫はつむっていた目を開き、
「ソラ!こんなとこで何してんだ!」
猫はそう言うやいなや台を飛び降り、
それまでのノンビリした様子からは想像できないほど
素早い身のこなしでアオの背中に飛び乗りました。
人々はあっけに取られましたが、
2匹の猫はかまわず馬の背中でお話を続けます。
「お兄ちゃんたちを探して牧場を出てきたの。」
「うん、そうか、さびしかったのか。」
「うん。」
トラ兄ちゃんが潤んだ目を
一生懸命なめてくれたので
ソラは気持ちが落ち着きました。
「お兄ちゃん、他の2人はどこにいるか知らない?」
「弟のクロはお金持ちの大牧場にいるって噂だ。」
「お兄ちゃんも一緒に行こうよ。」
「そうだな・・・
俺も毎日みんなに媚びうる生活に嫌気がさしてたとこだ。」
「やった!」
「そうと決まれば出発だ!」
不思議そうな顔をしている人々や
あわてて飛び出してきた屋台のおじさんをよそに、
2匹の猫を乗せたアオは軽やかに駆け出しました。