「ソラちゃーん!」
丘のほうからソラを呼ぶ声がしました。
「ただいま〜!おかぁさ〜ん!」
ソラをかわいがってくれた牛のお母さんが、
丘の上からゆっくりと駆けてきています。
ソラは一目散にお母さん牛に駆け寄ると、
ピョンと背中に飛び乗りました。
そして気持ちよさそうに目を細め、
のどをゴロゴロと鳴らしました。
お母さん牛もニッコリして、
「ソラちゃんおかえりなさい。」
と優しく言いました。
ソラは大好きなお母さんの背中で
幸せいっぱいな気持ちになりました。
『できればこのままずっとお昼寝していたいな』
ソラは真剣にそう思いました。
すると突然トラが叫びました。
「おい、あれ見ろ!」
みんなはいっせいに、
トラの指さす方を見ました。
そこには、他のお母さん牛たちはもちろん、
アオの牧場にいた馬たちや
森のキタキツネ、エゾシカ、クマゲラも一緒です。
空のずっと高いところではイヌワシが旋回しています。
お母さん牛が言いました。
「わたしのいる牧場もソラちゃんや
アオの牧場も近くの森も
全部悪いおじさんに取られそうなのよ。」
その目は涙でいっぱいです。