今年になって、自分は西船橋に越してきました。

こちらにきて一番嬉しかったこと、

それは空が広いことです。

西船橋の前は東京・茅場町にいました。

隣町はご存知兜町がひかえるオフィス街。

住まいは、比較的日当たりの良い場所でしたが、

見上げる空は、高い建物に邪魔されて、

そのカタチは不等辺四角形に区切られていました。

 

「おまえの分はこの線で囲ったとこだからね。

 茅場町ではそうなってるからよろしく。」

 

空にそう言われた気分です。自分は、

 

『ツマンナイなぁ』

 

そう思うと、以来空を眺めることをやめました。

 

 

 

 そして六年、故郷にほど近い西船橋に移ってきて、

空ってこんなに広かったっけ?とあらためて驚きました。

 

「西船橋に来たそこのあんた、

 ここでは空はみんなで仲良く、

 等しく全部を眺めることになってんだ。

 まぁ存分に楽しんでよ。」

 

西船橋の空はきっぷがいい!

自分はもう一度広い空を眺めることを楽しむようになりました。

 

 

 

 今夜も西船橋の夜空には、

砂時計の形をした星座オリオン座がいてくれました。

自分の知っている数少ない星座の中のひとつです。

目の前にいてくれるとホッとします。

正式には、どの星をどのような線で結ぶのかは知らないけど、

自分のなかでは実は砂時計座ということになっているのです。

 

 

そこに、赤色照明の点滅を繰り返し

青や白の照明をちりばめた飛行機が飛んできました。

 

ぼーっと目で追いながらケムリをゆっくり吐き出すと、

「寒いなぁ。」

ひとり言も一緒に出ました。

お彼岸を過ぎたとはいえ夜になれば外はまだ寒いのです。

 

それでも、こうして空を眺める時間がお気に入りの最近。

特に今夜のようにホロ酔いの晩はなおさらです。

「もう一服つけるか。」

別のタバコに火を点け空を見上げると、

東から別の飛行機がやってきました。

 

 

 

「なんだかいっぱい集まったなぁ。」

 

気がつけば、今夜の西船橋上空には

4機もの飛行機がひしめいています。

西船橋は羽田や成田の空港にも近い場所です。

みんな滑走路があくのを待っているのでしょうか?

 

ホロ酔い頭の中で管制塔とパイロットとの会話が始まりました。

 

『えー管制塔どうぞ。』

『はい、こちら管制塔どうぞ。』

『そっちに着陸したいんだけど大丈夫かな?』

『うーんと、チョッと今並んじゃってるんだよね。』

『そっかぁ、じゃあどうしよっか。』

『そうだなぁ、いつもの西船橋で待ってて。あいたら呼ぶからさ。』

『オッケー。じゃあ西船橋で待ってまーす!』

 

そうだ、そうに違いない!

だからこんなに飛行機がいるんだ。

ボンヤリ頭がおかしな結論に達すると、

 

「今度はUFOこねぇかなぁ。」

 

次なる妄想がオバカな頭に浮かんできたことで、

ホロ酔いはとっくに通り越していることに気がつきました。

もう部屋に戻る潮時でもあるようです。

 

「さてと戻ろうかな・・・

 西船橋で待ってて・・・ってか。。。」

 

 



西船橋で待ってて
inserted by FC2 system