★青空にいっぱい〜その1★

アオのこと



「アオ」はオスのサラブレッドです。この牧場で生まれました。

競走馬をしていたときには違う名前がついていました。
「アオ」というのは牧場での呼び名です。
その目が青いからなのか、その毛色が青毛だからなのか、
あるいは、そのどちらもなのか本当の理由はわかりません。
気がついたら、みんなが「アオ」と呼んでいました。


アオは、とても期待されていました。
アオの姿を見た誰もが溜め息をもらし、

「この馬を私に譲ってくださいませんか?」

そう言いました。
やっとのことでアオを手に入れた馬主さんは、
今にも泣き出しそうに感激していたほどです。


でも、実際の競馬でアオは一度も勝てませんでした。
彼は、競馬で1等賞になることに興味がなかったのです。
調教師の先生は、

「稽古で誰よりも速いのになぜだろう?」

そう言って嘆きました。


ついに、調教師の先生はアオがあんまり勝てないので、
競走馬としてアオを訓練することをあきらめました。
そうしてアオは生まれ故郷の牧場に帰ることになったのです。




            イラスト:(C)'あ'



アオはホッとしていました。
競馬場で騎手のお兄さんにムチを入れられるのも、
他の馬がおっかない顔で睨みつけてくるのも嫌いだったからです。

「早く牧場に着かないかな。」

馬運車で揺られていたアオは、いつしか眠っていました。


アオは、お友達と牧場を走り回る夢を見ました。
みんながニコニコ笑っています。
アオも嬉しくて、いっぱいニコニコしました。


ガラガラと砂利を踏む音でアオは目が覚めました。
牧場はもうすぐそこのようです。
その時、車がひときわ揺れて停まり、
『ギーッ』という音とともに扉が開きました。
まばゆい光の中に緑の牧場が広がっています。
アオはついに懐かしい牧場に帰ってきたのです。



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