★青空にいっぱい〜その2★

トラ兄ちゃん



むこうから祭囃子が聞こえてきます。

「アオ行ってみよう!」

ソラは楽しげなリズムにウキウキし、
急いでアオの背中に飛び乗りました。
アオはそんなソラの様子にニッコリすると、
お囃子の聞こえる神社に向かって歩き出しました。


たくさんの屋台が並んで、
その灯りが参道を明るく照らしています。

「うわぁカワイイね!」

父親に手を引かれた女の子が指差すほうを見ると、
屋台の店先にしつらえた台の上に
1匹のトラ猫が座っていました。
人々がその頭を撫でると、
猫は気持ち良さそうに目をつむったり、
時には『にゃー』と鳴いています。




             イラスト:(C)'あ'



「お兄ちゃん?トラ兄ちゃん!!」

アオの背中でソラが叫びました。
その声で猫はつむっていた目を開き、

「ソラ!こんなとこで何してんだ!」

猫はそう言うやいなや台を飛び降り、
それまでのノンビリした様子からは想像できないほど
素早い身のこなしでアオの背中に飛び乗りました。
人々はあっけに取られましたが、
2匹の猫はかまわず馬の背中でお話を続けます。

「お兄ちゃんたちを探して牧場を出てきたの。」
「うん、そうか、さびしかったのか。」
「うん。」

トラ兄ちゃんが潤んだ目を
一生懸命なめてくれたので
ソラは気持ちが落ち着きました。

「お兄ちゃん、他の2人はどこにいるか知らない?」
「弟のクロはお金持ちの大牧場にいるって噂だ。」
「お兄ちゃんも一緒に行こうよ。」
「そうだな・・・
 俺も毎日みんなに媚びうる生活に嫌気がさしてたとこだ。」
「やった!」
「そうと決まれば出発だ!」

不思議そうな顔をしている人々や
あわてて飛び出してきた屋台のおじさんをよそに、
2匹の猫を乗せたアオは軽やかに駆け出しました。



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