★青空にいっぱい〜その1★

ソラのこと・つづき



ソラはぐーんと前脚を伸ばしたあと、
体をアーチ型に縮め、
次に首をプルプルしました。
最後には仰向けに寝そべって、
背中のムズムズを地面で掻いて2回転すると、
何ごともなかったような顔で隣の牧場に歩きだしました。
一度だけさっきトラックから降りてきた馬を振り返りましたが、

「どうせ競馬の馬よ。」

そう思い真っ直ぐおとなりに向かいました。




                                  イラスト:(C)'あ'



柵を越えたところで隣の牧場のおじさんに、

「ソラ、牛乳のんでけ。」

と大きな声で呼ばれました。
ソラは目を少し細め、

「にゃ〜ん。」

と鳴きながらそちらに向かいます。


大好きなおじさんちの牛乳を飲んでいると、
ソラの牧場のおばあちゃんが来ました。

「あれ、またソラきてるんだぁ。わるいねぇ。」

「いいんだよぅ。こいつおもしろいんだ。
 いっつも牛にのっかってよぅ。」

ソラの話をしています。


おばあちゃんが言いました。

「この子は不思議なんだよねぇ。
 赤ん坊の時から『ソラ飲め』って言わないと
 哺乳びん見向きもしなくてさ。」

おじさんも言います。

「そうなんだぁ。『こら飲め』って言ったら
 ウンともニャンとも言わないでよ。
 それで名前が『ソラ』になったんだもんなぁ。」

2人はソラの名前がどうしてついたかを話しています。
ソラは片耳で聞いていましたが、
なんにもわからないふりで牛乳をなめました。



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